金雲のすき間

合戦図屏風より愛を込めて

大河『軍師黒田官兵衛』のこと【4】

21日に最終回を迎えました。 関ヶ原ですし、絶対オンタイムで見ようと 20時までに万障繰り合わせの上テレビ前に鎮座しましたが

えっと……

まず、出演者テロップに〝大谷吉継〟の名前が無い! 関ヶ原合戦的には秀秋寝返りからの非常に重要な場面だと思うのですが…… スルーかよぉぉぉぉぉ と意気消沈しつつ見守る。

法螺貝に胸躍る合戦開始 わーっと霧に煙る合戦の状況が映し出され えねーちけーようやく合戦に本腰入れたのか よしよし、と呟きつつ戦況を眺めていたところ

長政「石田三成ぃぃぃぃぃ!」

あれ? 場面転換?

関ヶ原10分足らずで終了。

確かに確かに主役は石垣原だし、 関ヶ原って一日ってか半日で終わっちゃった合戦だけど 戦国史最大の見せ場だし…… ここは各武将の生き様の……えっ?えっ?

六条河原に晒される三人は 心情描写もないので淡々とし過ぎて悲壮感もない。 いや、悲壮感は求めてないけどここに至った経緯考えたら 〝捕縛されました、はいおしまいです〟 っていうのとは違うと思うのね。 そこにはドラマがあると思うのですよ。 そのドラマが大河なんじゃないの? 長政君が陣羽織掛けてくれる場面だけ拾ったのは 黒田さんちが主役だからかな。

唯一恵瓊さんだけが生き生きとしていましたが もったいないキャラだよなぁ、 やっぱりそこに至るまでの印象的な描写が少なかったから 〝なんであんたそこにいるの?〟 っていう感じが否めない。 いい演技してたのに……

そこから先は見る気も失せて ただテレビを流しっぱなしにしていただけですが 官兵衛が長政にいった 「その時、お前の左手は何をしていた」は、やったんだな。 これと 「ご武運が開けましたな」 の二つを言わせたくて一年やってたドラマなんじゃないかと思うことしきり。

あとね、あれだけ秀吉を嫌っていて利用することしか考えていなかった風な茶々が 最後に「太閤様の下へ」って自害する描写、唐突過ぎる。 もうちょっと話の筋の中に〝なんだかんだ言っても嫌いじゃなかった〟っていう 描写があってもよかったと思うの。 私が見落としてただけか?

時々挟まれる〝あれ?そのエピソード見落とした?〟っていうこと多すぎです。 味噌汁とか又兵衛出奔とか。 視聴者置いてきぼりな話は極力避けるべきだと思うのですよ。

登場人物も多い、一年という長いスパン、それは大河としては当然のこと それだからこそ人物を深く掘り下げて描けるということが利点なはずなのに、 全然生かされてない。 描ききれない登場人物が散在し それがみんな主人公たる黒田官兵衛を生かす(描写的な意味で)だけの存在になり 主役以外の登場人物に魅力を感じられなかった。

どの武将にもそれぞれの理があり、生き様があり、 主役の引き立て役ではない。 各武将がそれぞれ泥臭い持論でこの時代を生き抜いている。 その中で主役の官兵衛に光を当てたものが大河であるべきなのに 主役以外の周囲を全部落とすことでしかスポットを当てられなかったのが 今回の大河だったのではないかと思うのです。

一年通して記憶に強く残ったのが 有岡城荒木村重さんってどういうこと?

ところで、その荒木さんところの絵描きになった息子さん 大河に登場しましたが、 黒田長政が彼に描かせたのが 『大坂夏の陣図屏風』 と、言われています。

せっかく〝絵師になったんだよ〜〟という描写があったのに そこに触れずに終わってしまったのもとても残念。

残念ばかり続きましたが、 よかったところを最後に一言と思ったところ……

無いよ!

どうしたらいいんだ、これ。 決して面白くなかったわけではない。 一年飽きずに見続けたのだからそれなりに楽しめていたはず。 何がこんなに物足りないのか……

戦国武将たる主人公に生々しさがなかった。

生まれもよかったし 失敗してもそれ本人のせいじゃなかったり、 秀吉や家康に疎んじられても〝なにくそ!〟というハングリー感がなかった。 さらっと綺麗に終わっちゃったという……

ああ、そうだ。 時代が時代なのに泥まみれ汗まみれ血塗れになって這い上がるあの感じがなかったんだ。 有岡城に幽閉されてたときだけだよね、それって。

綺麗な黒田官兵衛でした。 一年間ありがとうございました。 楽しかったです、大河。