金雲のすき間

合戦図屏風より愛を込めて

〝戦国合戦図屏風〟研究の成り立ち

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『特別展 戦国合戦図 屏風の世界』(1997)和歌山県立博物館

これをずっと探していたのですよ。
いろいろな資料をみていると必ず参考文献に名前を見るのですが、実物がなかなか手に入らず……国会図書館のコピーしかないかなぁと思っていたら、オクに出品されました!なんとか落札して無事入手!

18年前なんて自分が〝合戦図屏風〟に興味を持つようになるなどと思いも寄らなかった頃なので当然この特別展は知る由もなかったわけですが〝合戦図屏風〟の研究に関して大変重要な特別展であったということをいろいろな資料を読みあさるうちに理解しました。

以下、図録からの引用。
戦国合戦図屏風の研究が進められた歴史となります。

歴史学の分野ではこれまで戦国合戦図屏風そのものの史料性を真剣に吟味してきたとは言い難い。歴史家が文献資料を引用し、まして図版まで掲載する場合には、当然その成立背景や伝来についての厳しい史料批判を前提とする。

合戦図屏風に描かれているものは必ずしも史実と一致しない事が多いですし、歴史学的には蚊帳の外だったのでしょう。

では絵画史の分野では、戦国合戦図屏風が正当に評価され、学問的に見当されてきただろうか。確かに絵画史の研究者は古くから戦国合戦図屏風の中に優れた作品があることに注目し、それらを桃山・江戸の絵画史の中に位置づけようとしてきた。しかし彼らが取り上げるのは決まって大阪市立博物館(2001年閉館)蔵(現:大阪歴史博物館所蔵)「関ヶ原合戦図屏風」や大阪城天守閣蔵「大坂夏の陣図屏風」といった際立った名品ばかりであり、戦国合戦図屏風を総体として把握し、群として検討しようとする視角を欠如してきたといわざるをえない。

どちらの合戦図屏風も重要文化財ですので納得です。

こうした状況の中で、先駆的業績として、まず評価されなければならないのは、大阪城天守閣で1979年に開催された特別展「戦国合戦図屏風」展であろう。そもそも戦国合戦図屏風という作品が群として世の中に存在すること自体、同展が世に示したと言っても過言ではない。

ここれが〝合戦図屏風〟研究の始まりという事らしい。

ついでこの展覧会の成果を発展させるかたちで、1980年『戦国合戦絵屏風集成』全六巻(中央公論社)が刊行された。屏風絵の細部までカラー図版で確認することが可能になったばかりではなく、歴史・絵画史の研究者がここの作品について考察した結果を持ち寄り、戦国合戦図屏風をめぐる学問的認識を一挙に高めている。またこれらの仕事に触発されるかたちで、全国で多くの戦国合戦図屏風が新たに発見されることにもなった。かつては二十件程度と把握されていた作品数も、今回の調査で七十件近くにまで増加している。

 『戦国合戦絵屏風集成』入手済です。35年も前の物ですが、資料として充分なボリュームです。たぶん現在の技術で再版していただけたらもっともっと綺麗な印刷になるのだろうな〜と思うので、所蔵など詳細な部分に変更は必要となるでしょうが是非是非お願いしたいところです。

そして、この図録の展覧会の意義として

この「戦国合戦図屏風の世界」展は、こうした先駆的な成果を継承・発展しようとする意図で企画された特別展である。 

 見たかったです、合戦図屏風の集大成のような展覧会。

 

この図録、屏風絵そのものの図版にまして、合戦図屏風の背景・解説も詳しく書かれ、読みごたえあります。

楽しいです、屏風♪
また合戦図屏風だけ集めた展覧会やって欲しいですわ。